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#1 あらすじ

コンサートマスターの小栗です。新企画の曲紹介,第1回目ということで今回はオペラ『ヘンゼルとグレーテル』のストーリーについてお話したいと思います。ヘンゼルとグレーテルをご存じない方はいらっしゃらないとは思いますが、絵本を読んだ記憶は遠い過去のことでしょうから念の為ここで一度おさらいをしておきましょう。

 

 

第一幕

ある森のそばに貧しいほうき職人のペーターとゲルトルート、長男のヘンゼルとその妹グレーテルが住んでいました。ある日のこと、言いつけられた仕事に飽きてしまった留守番中のヘンゼルは「お腹がすいた」と言い出し、我慢できずに家のミルクをなめてしまいます。兄妹が遊んでいるところに帰ってきたゲルトルートは子供たちが仕事もせずに遊んでいることに大激怒。怒った勢いでミルクの入ったつぼを割ってしまいます。それを見てくすくす笑うヘンゼルにさらに怒ったゲルトルートは、兄妹を森へいちごを摘みに行かせます。

ゲルトルートが疲れて眠ったところに、ほうきが売れて上機嫌なペーターが食料をたくさん持って、陽気に歌いながら帰宅します。それを見たゲルトルートは機嫌を直し大喜び。しばらくしてペーターは兄妹がいないことに気が付きます。「ミルクを割った罰として、森にいちごを摘みに行かせた」と伝えるとペーターの顔は真っ青に。「森には子供を捕まえて食べてしまうお菓子の魔女が住んでいる」と語り、両親は慌てて森へ兄妹を捜しに向かいます。

 

第二幕

ヘンゼルはいちごを摘み、グレーテルは花飾りを作っています。兄妹はカッコウの鳴きまねをしながら摘んだいちごを食べさせあいをします。どんどんエスカレートしていき、遂にはいちごをすべて食べ尽くしてしまいました。時間はあっという間に過ぎ 辺りは真っ暗。森の奥で兄妹は道に迷って帰れなくなってしまいます。そんな時暗闇から小さな光が少しずつ近づいてきました。光の正体は、砂の精でした。砂の精は「ぐっすり眠って素敵な夢を見なさい。」と子供たちに魔法の砂をふりかけます。

 

第三幕

二人が眠っているうちに朝になります。露の精が子供にベルフラワーから露を振りかけると、二人は目を覚まします。「14人の天使が夢に出て来た」と話していると、太陽の光に照らされてお菓子の家が現れます。お腹の減っていたヘンゼルとグレーテルはお菓子の家に手を伸ばします。すると部屋の中から、「私の家を食べているのは誰だ?」と声が。二人は「風の音だよ」と気にせずに食べ続けます。しばらくすると魔女が現れ、お菓子を夢中で食べているヘンゼルにロープを投げて捕まえます。魔女はヘンゼルを太らせてから食べようと考え、魔法の杖を使ってヘンゼルを檻の中に閉じ込めます。ヘンゼルは太らせるために無理やりお菓子を食べさせられ、グレーテルは魔女の手伝いをさせられることになりました。

魔女はヘンゼルの太り具合を調べるためにヘンゼルの指に触ろうとします。それに対し機転を利かせたヘンゼルは細い木の棒を差し出し、ヘンゼルが痩せこけていてまだ食べごろではないと勘違いさせます。

しばらくして魔女が「美味しそうな匂いがするねぇ。かまどに顔を突っ込んで、中の様子を確かめてみなさい」と言います。チャンスとばかりにグレーテルが「やり方がわからないから、お手本を見せてよ」と返します。「こうするんだよ・・・」と言いながら魔女がかまどに顔を突っ込んだその時、グレーテルは魔女の目を盗んで牢から抜け出していたヘンゼルと一緒に後ろから突進し、そのまま魔女はかまどの中へ。兄妹は魔女から解放されたことに喜び抱き合います。魔女が退治されたことによって捕まっていた他の子供たちも姿を現し、グレーテルは魔法を解いてあげます。

最後に二人の両親もかけつけ、みんなで神様に感謝のお祈りを捧げます。

 

 

どうでしょうか。みなさんの知っている『ヘンゼルとグレーテル』とは少し違いませんか?実はフンパーディンクのオペラ『ヘンゼルとグレーテル』は原作であるグリム童話の同名作品とは少々趣が異なります。最も大きな違いはお母さんです。グリム童話では「ヘンゼルとグレーテルを口減らしの為に捨てようとする悪いお母さん」として描かれているのに対しオペラでは「(感情の起伏が激しいものの)魔女の森へ入ってしまったヘンゼルとグレーテルを心配して探しに行く良いお母さん」であると言えます。この違いは結末に大きな違いを与えていると言えるでしょう。

他にも細部が異なっており、「精霊」や「天使」の登場により舞台をより一層華やかなものにしています。